アイロン不要!アセトンを使った真鍮・銅エッチング

エッチングとは

エッチングとは,ターゲットを酸化して模様などを浮かび上がらせる技術です.例えば電子基板は銅箔が一面に貼られている板にエッチング処理を施すことで,回路を形成しています.

エッチングの簡単な手順

エッチングの詳しい手順を説明する前に,簡単な手順を紹介します.

  1. 描きたい絵柄をレーザープリンタでプリント(コンビニのマルチコピー機推奨)
  2. ターゲットにインクを転写
  3. ターゲットを溶液に漬け,エッチング
  4. 水で洗い表面を磨く
  5. エッチング溶液を処理して完成!

必要なもの一覧

基本的に必要なものは全部Amazonで手に入るので,そのリンクを載せておきます.今回使うターゲットは真鍮板ですが,トナーが転写できる金属であればOKです.

エッチング開始!

絵柄を書く

転写したい絵柄を白黒で描きます.トナーの付く部分がマスクとなって酸化されなくなるので,グレーなどにしても意味がありません.マスクにしたい部分は真っ黒に,そうでない部分は白にしましょう.

どこかにありそうな魚のロゴを書いてみました.デザイン力が欲しい.

この時,紙を裏返してトナーをつけることになるので,文字を入れたい場合は左右反転してください

印刷

デザインしたものをレーザープリンターで印刷します(インクジェットではトナーが上手く転写されないようです).セブンのマルチコピー機が便利.


基板磨き

エッチングする金属をスチールウールなどで良く磨きます.

トナー転写

いよいよトナーを転写していきます.多くの方がアイロンを使って転写をされていますが,ここではアセトンを使って転写していきます.

使わないインクや書類で試してみると,アセトンがトナーを溶かすことが分かります.この性質を利用しますが,アセトンは揮発性が高いために基板にトナーが写る前に蒸発することがあります.これでは不便なので,アルコールと混ぜてしばらく乾かないようにします.

私は量比でアセトン:アルコール = 4:6になるように調整したものを使いました.

これを基板に垂らし,すぐにパターンの紙を重ね,上から本等で押さえます(約1分).

本を使用しているのは,ある程度均等に力を掛けるためです.基板がある程度湾曲していても,本のように柔らかければフィットしてくれます.下敷きなどでもいいかも.

(2019/06追記)本よりも、均等なスポンジを使ったほうがきれいに転写できます!なるべく密度の高いスポンジを選んで挟みましょう。

上手くトナーが転写できていれば,基板を横にしても紙が落ちてきません.

紙剥がし

アルコールが飛んだら,紙の上から水を垂らし,ふやかします

これを指で広げ,全体が濡れるようにします.その後浸透するまで待ち,指で優しくこすり紙だけ取り除きます.

※この段階でトナーがはがれてしまった場合でも,全体にアセトンをかけてティッシュで拭くことでリセットできます.アセトンはいいぞ.

上手くいくとこのようにトナーだけ残ります.


エッチング溶液の調整

食塩:クエン酸 = 1:4程度の比にして,オキシドールに溶かします.

オキシドールのみでは酸化銅が析出し反応が止まりますが,クエン酸を加えることでこれを溶かすことができます.また,食塩は酸化を促進します(海辺で鉄が錆びやすい現象とおおよそ同じ).

溶かすとこんな感じ

エッチング本番

やっとエッチングです.溶液にトナーを転写した金属板を入れます.この前に,金属板をアルコールで拭いて油分を取っておきましょう.もし指紋が付いていたりしたら,その部分だけ酸化されずにくっきり残ります.

見た目のインパクトがすごい.

暫くすると泡が発生して,下に緑色のものが溜まってきます.

取り出し・洗浄

どのくらい深く模様を作るかに依りますが,適当なところで引き揚げましょう.

相当恨みがあるんでしょうね…

これにアセトン原液をかけ,ティッシュでトナーを取り除きます.するとトナーがあった場所のみピカピカで,それ以外の部分はざらざらになっています.これで完成です!!!

それっぽいロゴの方も綺麗にできました.

廃液処理

ここが一番重要な工程と言っても過言ではありません.今回の作業で出た廃液には銅イオン,亜鉛イオンが含まれます.これらをそのまま流すのは法律で禁止されており,環境汚染につながるので絶対にやめてください.こちらの記事の廃液処理のやり方を参考に,イオン化傾向の高いアルミホイルを入れ,銅・亜鉛を析出させます.また,クエン酸により酸性となっているため,炭酸ナトリウムや重曹を泡(弱酸の遊離に伴うCO2)が出なくなるまで加え,中和します.この溶液をろ過し,残った沈殿は各自治体の処理方法に従い処分してください.また,上澄み液も蒸発を待ち,析出した粉末も同様に処理します.適切な処理が終わり,エッチングの終了です.重ねて言いますが,絶対に下水に流さないでください.

完成!

皆さんもぜひチャレンジしてみてください~(終)

「アイロン不要!アセトンを使った真鍮・銅エッチング」に3件のコメントがあります

  1. ピンバック: 【アイロン不要】プリント基板を自作してみよう【生基板】 | Wak-tech

  2. 水谷成美

    石碑の裏側に説明文(80字ほど)を金属板(50x60cm)に転写したいと思います。耐久性はどれほどでしょうか?

    1. コメントありがとうございます。
      耐久性ですが、長期に渡り確認したことがないので不明です。
      エッチング後は表面積が増大しており酸化しやすいため、よく水で洗浄して乾燥させてから、何か透明な塗装をするのが良いかと思います。

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